【経営解剖】鳥羽周作シェフが「現場」に戻った理由。
孤独な経営者を最後に救うのは、ロジックではなく「初期衝動」だ
「相変わらず、美味しいパスタを作る陽気な面白いおじさんだな」
正直、私はそう笑って見ていました。
しかし、その流れでふと目に入ったのが、彼が2か月前に公開していた『久しぶりにnoteを再開します』という一本のnoteです。
軽い気持ちでクリックした私は、そこで言葉を失いました。
さっきまでペヤングを笑顔で食べていた人物と同一人物とは思えないほど、そこには経営者が直面する孤独と、血の滲むような決断が記されていたからです。
彼が語っていたのは、拡大し続けるビジネスの中で感じた違和感と、「もう一度、現場(キッチン)に戻る」という決断。
「やっぱり料理を通して人を喜ばせることが好きなんだ」という原点回帰でした。
この言葉に、ハッとした経営者は多いはずです。
今日は、このペヤングとnoteのギャップから見えた、Gerberaが考える「経営者が最後に立ち返るべき『軸』」についてお話しします。
1. 経営者は、いずれ「自分の想い」と向き合わされる
飲食店を始める人の多くは、「料理が好き」「人に喜ばれるのが好き」という純粋な動機(初期衝動)からスタートします。
しかし、店が繁盛し、店舗が増え、組織が大きくなると、オーナーの仕事は変質します。
包丁を置き、パソコンに向かい、数字(PL/BS)を管理し、人の採用や評価に追われる日々。「経営者」として振る舞うことを求められます。
もちろん、それは会社を存続させるために必要なことです。
ですが、ふとした瞬間に「孤独」が襲ってきます。
誰も自分の苦しみをわかってくれない。
数字だけの判断では、心が動かない。
私がこれまで見てきた多くの経営者の方々も、ある段階で必ず、嫌でも自身の「想い」と向き合うタイミングが訪れていました。
「俺は、何のためにこれをやっているんだっけ?」と。
2. 孤独な夜、最後に支えになるのは「軸」だけ
経営判断は、正解のない問いの連続です。
コロナ禍のような予測不能な事態や、信じていたスタッフの離職。論理(ロジック)だけでは説明がつかないトラブルが、経営者には降りかかります。
そんな時、最後の最後に踏ん張る力になるのは、小手先のテクニックや損得勘定ではありません。
- 「俺は、この料理でお客さんを笑わせたいんだ」
- 「この場所(店)を守りたいんだ」
そんな、泥臭くて人間臭い「軸(想い)」だけが、折れそうな心を支えてくれます。
鳥羽シェフがキッチンに戻ったのも、彼にとっての最強の武器であり、生きる軸が「料理で喜ばせること」だったからではないでしょうか。
3. 理屈を超えた「熱量」が、人を動かす
誤解してほしくないのは、「経営(数字)を捨てて、職人に戻れ」と言いたいわけではありません。会社を存続させるためには、冷徹な計算も不可欠です。
しかし、鳥羽シェフが今回の決断で示したように、最後にお客さんの心を震わせ、スタッフを惹きつけるのは、「これが好きだ」「これを届けたい」という理屈を超えた熱量です。
どれだけAIが進化し、効率化が進んでも、その「初期衝動」だけは代替できません。
だからこそ、経営者であるあなた自身が、その情熱を失わないことが、店にとって最大の資産なのです。
まとめ:最後に立ち返るべき場所
経営者は孤独です。
正解のない問いと向き合い続け、一人で決断を下さなければなりません。
だからこそ、迷った時は思い出してください。
あなたが店を始めた時の、最初のワクワクや、どうしても譲れなかったこだわりを。
数字や日々の忙しさに埋もれてしまいそうになっても、心の奥底にある「軸」さえブレなければ、どんな時代も生き抜いていけます。
その「軸」こそが、孤独な経営者を支える最後の砦なのです。
