【経営の罠】「友達だから一杯奢るよ」が、実はここまで利益を圧迫する。
数字で見る「サービス」の適正ライン
お店をオープンすると、地元の友人や、お世話になった先輩が「祝いに行くよ!」と駆けつけてくれることがあります。
オーナーとして、本当に嬉しい瞬間ですよね。感謝の気持ちで、ついついこう言いたくなる気持ち、痛いほどわかります。
「来てくれてありがとう!このビール、一杯サービスするよ!」
その気持ちは素晴らしいものです。
ですが、経営者としては少しだけ冷静になる必要があります。
今回は、「その一杯のサービスが、経営数値にどう影響するか」を、具体的な数字で見ていきましょう。
1. 「原価200円」を取り戻すための計算式
ここで、一つ問いかけをさせてください。
Q. 原価200円のビールを友人に奢った。この損失を帳消しにするには、他のお客様に何杯売る必要があるでしょうか?
(※利益率10%とする)
多くの人が「1杯売れば、利益が出るから大丈夫(トントンになる)」と感覚的に思ってしまいます。
しかし、会計の世界では少し違った見方をします。
お店から消えた「現金200円(コスト)」を、再び「利益」として手元に残すためには、以下の売上が必要になります。
- 必要な売上高 = 損失額 ÷ 利益率
- 2,000円 = 200円 ÷ 10%
つまり、たった一杯のビールをサービスした分を帳消しにする(プラスマイナスゼロに戻す)だけで、他のお客様に2,000円分(ビール約4杯分)を売る労力が必要になるのです。
「たかが200円」ではありません。
経営において、現金の流出(キャッシュアウト)は想像以上に重いのです。
2. 「感情」と「勘定」のバランス
ある失敗事例のレポートに、21歳で開業した若きオーナーの話があります。
彼はとても人が良く、友人が来ると「友達価格」や「サービス」を頻繁に行っていました。
彼に悪気はありませんでした。ただ、「喜んでほしい」「かっこいいところを見せたい」という純粋な気持ちでした。
しかし、「感情(サービス精神)」が「勘定(利益管理)」を上回ってしまった時、お店の体力は静かに削られていきます。
結果として、彼は運転資金のショートに苦しむことになりました。
これは彼だけの話ではなく、多くの優しいオーナー様が陥りやすい「構造的な罠」です。
3. 賢い「おもてなし」の方法
では、友人が来てくれた時に、何もサービスしてはいけないのでしょうか?
そんなことはありません。重要なのは「出し方」です。
もし感謝を伝えたいなら、原価の高いビールやお肉ではなく、以下のような工夫をしてみてはいかがでしょうか。
- 原価の安い「小鉢」を一品出す
- 自家製のピクルスや、枝豆などであれば、原価は数十円で済みます。
- お客様にとっても「わざわざ一品出してくれた」という満足感は変わりません。
- 「仕入れすぎた食材」を活用する
- ロスになりそうな食材を「味見してみて!」と出せば、廃棄ロスも減らせて一石二鳥です。
まとめ:数字を知ることは、優しさを守ること
「ケチになれ」と言いたいわけではありません。
ただ、「そのサービスが、お店の経営にどれくらいの重さを持つのか」を知っておいてほしいのです。
- 感情(Emotion): 友人を喜ばせたい心。
- 勘定(Calculation): お店を存続させるための数字。
この2つを切り分けて考えることが、長く愛されるお店を作る第一歩です。
お店が潰れてしまっては、友人を喜ばせることもできなくなってしまいますから。
Gerbera Strategy Team
